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熊坂

物語

熊坂

都の僧が東国を目指し、美濃国・赤坂にさしかかると、一人の僧が現れ呼び止め、今日はさる者の命日なので弔って欲しいと頼みます。一体誰を回向するのかと問うと、その名は明かさず、自分を庵に案内します。

 

庵の中は仏像とてなく、ただ長刀や武具があるばかり。その訳を尋ねると、この辺りは山賊・夜盗が多く出没し、助けを求める人々のため長刀を携えて駆けつけるのですと答え、それは仏のみ教えにも適うことと言って、寝室へ姿を消すと見るうちに、不思議なことに辺りは一面の草むらとなり、松の木の下に世を明かすのでした。

 

やがて弔う僧の前に、長刀を担いで熊坂長範の霊が現れます。その熊坂こそ弔いの主だったのです。

 

奥州へ下る金売り吉次一行に夜討ちをかけた熊坂は、逆に一行の中いち牛若丸(後の源義経)に討たれてしまった最期を詳しく語るのでした。

 

舞台展開

熊坂

次第の囃子でワキ(旅僧)が登場します。都から近江路を過ぎ、美濃国に到る旅程は〈道行〉の部分で謡われます。美濃国・赤坂に着くと、幕の内よりシテ(僧)が呼び止めます。シテの出で立ちは、角帽子に水衣で、ワキと同じ姿です。今日はある者の命日なので弔って欲しいと頼み、橋掛の途中で、墓を指し示すように遠望します。弔いの主の名を明かさず、シテはワキを自分の庵に案内します。舞台中央にシテが座るとそこは持仏堂の内の場面です。持仏堂には仏像もなく、大長刀や兵具が有るのを不審がるワキに、シテはその訳を教えます。〈クセ〉の部分は、地謡によって謡われます。「仏道を守る仏たちも、時には武器を持って悪魔を降伏させるように、自分も僧でありながら、武器を持って盗賊に立ち向かうことは、人を助けるための方便」と語り、そこは一面の草むらとなる設定です。

 

熊坂

次第の囃子につれて、ワキ(勅使)が登場し、勅命によって薬の水を求めて山中に分け入る由を述べ、到着した体でワキ座に着きます。

 

間狂言(所の者)の語りの後、出端の囃子で熊坂の霊が長刀を担いで現れます。面は長霊べし見、長範頭巾を被り、法被の袖をたすきでたくし上げた姿です。ワキに請われるままに、夜討ちの有様を詳しく語る場面は、舞台中央で床几にかけます。

 

牛若丸がいるとも知らず、多くの手下を従えて夜討ちをかけ、逆に次々に討たれて行く件を、迫力をもって語ります。熊坂も一度は諦めて退こうするところからは床几から立ち、仕方話し(具体的な型)で激しい型の連続です。牛若丸の素早さに長刀を捨て、素手で向って行き、次第に深手を負い、ついには命を落としてしまった熊坂。弔いを頼んで姿を消します。

 

鑑賞

熊坂

同じ題材に「烏帽子折」という曲があります。この曲は現在物(現在進行形)の曲で、牛若丸、熊坂の手下の者達と、多彩な登場人物によって、夜討ちの場面が演じられます。それに対して、この「熊坂」は、シテ一人で長刀を持ち、舞台を縦横無尽に動いて夜討ちの場面を再現して見せるところに、息も着かせない面白さがあります。

 

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